シャイニング(1980)
The Shining

監督:スタンリー・キューブリック

この映画を最初に観たときはホントに怖かった。
鬼才キューブリックの「歴史に残る」ホラー映画である。

場所は秋のコロラドロッキーにそびえ立つ大型のリゾートホテル。
そこへ小説家のジャック・トランスが冬季管理人として雇用される。
夏は避暑地としてにぎわうこのホテルも、冬は大雪によって交通がマヒし、
街と完全に遮断されてしまうため、冬季の留守を守る管理人が必要なのだ。
トランスと家族(妻ウェンディ・息子ダニー)は早速ホテルに移り住む。
ところがこのホテル、数年前に陰惨な殺人事件が起こった場所だったのだ…。

この映画の「怖さのポイント」は2つあると思う。
ひとつはキャスト。
まずは誰が何と言ってもトランスを演じるジャックニコルソンの演技。
もともと怖い顔のジャックニコルソンが時間の経過とともに
どんどん変貌していく様はまさに「ぞっとする」というヤツだ。

妻のウェンディの演技は少々大げさでもうひとつ気に入らないのだが、この人も顔が怖い!
キューブリックの撮り方もあるだろうが、ギョロッとした眼を向いて叫ぶウェンディは相当怖い。
後半なんかは「ウェンディの絶叫ショー」である。
あんな驚き方をされたら周りにいる人間はカエルが跳ねてもとっても恐ろしいだろう。

息子のダニーもイイね。
ふいに妙なものを見て呆然とする様はとってもリアルで素晴らしい。

コックのハロランもイイ味出してるね。
終始マジメで人の良さをかもし出してる好人物。
この料理人は一種の超能力「シャイニング」を持っているらしい。
夏の仕事を終えたハロランは暖かいマイアミ(自宅?別荘?)で過ごす。
この部屋が気になる。
一見普通のホテルのようなのだがOhio Playersばりの黒人女性のパネルが
寝室に2つかけてあるところをみると、白人向けのリゾートではないだろう。
それとも黒人向けの部屋があるリゾートなのか?
キレイに整頓された部屋は自宅ではないような気がするが…
まさか別荘?ホテルのコックはそんなに儲かるのか?
私服を見ても色使いがオシャレだし、1970年当時の黒人コックにしては妙にハイソ。
とっても気になる謎の人物だ。(どうでもいいか…)

あとは、ホテルのBARの幽霊バーテンがとってもイイ。
気味悪いくらい自然なこのバーテンは、ホントにこの世のものじゃないように思えてくる。

もうひとつの怖さは小道具だ。
広い部屋に響くトランスのタイプライターの音。
転がるテニスボール、三輪車。
特に三輪車は床の上を走るとウルサイくらいなのだが、絨毯の上だとMUTEされる。
広く静かなホテルの中でON-OFFを繰り返すその音は何かを予感させてとても怖い。
もちろんキューブリックの撮り方があるから怖いのだが。

他にも双子のフラッシュバック、風呂場の女…怖いシーンはたくさんある。

さて、この映画、原作はスティーヴン・キングである。
とはいえ、映画ではかなりの部分が削られ、変更されている。
原作の方はあくまでホテルが恐ろしいのであってトランスが恐ろしいわけではない。
LASTも原作と映画とは全然違う。
この映画はキングの原作を基に創ってはいるが完全にキューブリックの作品である。

有名な話だがキングはキューブリックのこの作品を公然と否定している。
映画化されたものが原作と別のものになってもあまり文句を云わないキングだが、
この映画だけは相当頭に来てたようだ。
原因の一つはジャックニコルソン。
「普通の人間が徐々に狂っていかなきゃいけないのにアイツは初めから狂人じゃねーか!」と。
後にキングは自らの総指揮のもと、原作に忠実な「シャイニング」をTV版として創っている。
これはこれで楽しめるが、やはり似て異なるもの。
あまり比較してはいけないような気がする。


女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理